日本植物病理学会報
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イネいもち病菌Magnaporthe griseaシアン耐性呼吸欠損株におけるalternative oxidase遺伝子の解析
雪岡 日出男稲垣 秀一郎田中 玲爾加藤 研治三木 信夫水谷 章益子 道生
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1998 年 64 巻 4 号 p. 282-286

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抄録

イネいもち病殺菌剤SSF-126はイネいもち病菌Magnaporthe griseaミトコンドリア電子伝達系の複合体III (cytochrome bcl complex)に作用し,本菌のチトクローム系の呼吸を阻害する。しかし,いもち菌はalternative oxidase (AOX)を誘導し,SSF-126非感受性のいわゆるシアン耐性呼吸により酸素消費を回復させる。われわれは,本菌におけるシアン耐性呼吸機構解明のためシアン耐性呼吸欠損株(MS1-12)を分離し,解析をおこなってきた。これまでに欠損株7株のうちAOX蛋白質が検出されない株が3株(MS2, 5, 11)あり,残り4株(MS6, 8, 9, 12)は不活性AOX蛋白質を生産している株であることを示した。また野生株からAOX cDNAをクローニングし,SSF-126非存在下でAOXが過酸化水素やシクロヘキシミドにより発現誘導されることを明らかにした。今回,野生株から5'上流非翻訳領域726bpを含むAOXゲノムDNA 2661bpをinverse PCR法によりクローニングした。AOX遺伝子は3つのエクソンからなっており,その5'上流非翻訳領域には数種の転写因子結合配列が確認された。シアン耐性呼吸欠損株7株におけるAOX遺伝子発現解析の結果,すべての株においてAOX mRNAの発現が確認されたが,そのうちMS2株は発現が極端に低かった。塩基配列解析の結果,7株すべてのAOX遺伝子塩基配列内に塩基置換が確認された。以上の結果は,AOX遺伝子が本菌のシアン耐性呼吸活性発現を担っていることを示している。

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