日本植物病理学会報
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Serratia marcescens F-1-1によるキュウリ灰色疫病菌Phytophthora capsiciの生物的防除およびトランスポゾン挿入変異株によるその防除機構の解析
岡本 博佐藤 守佐藤 善司伊阪 実人
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1998 年 64 巻 4 号 p. 287-293

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抄録
キュウリ灰色疫病菌Phytophthora capsici P-9-2に拮抗作用を有する赤色色素産生菌F-1-1株が,福井県のサルビア根圏から分離された。本菌株は各種細菌学的性質の調査によりSerratia marcescensと同定された。本菌株は,in vitro試験でP. capsici P-9-2の遊走子嚢および被嚢胞子の発芽を強く抑制した。また,キュウリ苗の根圏土壌にあらかじめF-1-1株を接種しておくことにより,その後の病原菌の感染を強く抑制した。この拮抗作用は,F-1-1株の他,イヌツゲ根圏等から分離された赤色色素産生性S. marcescensのすべての株で観察されたが,白色コロニーのSerratia属細菌(6種)では認められなかった。拮抗作用機構を知るため,F-1-1株のトランスポゾン(Tn7)挿入変異株の作出を行った結果,4株の赤色色素産生喪失株を得た。これら変異株は,前述のin vitro試験およびキュウリ苗のポット試験のいずれにおいても,拮抗作用を失っていた。以上のように,F-1-1株は,キュウリ灰色疫病の生物的防除に十分利用可能なこと,およびその防除機構は本菌株の赤色色素産生能に基づくことが明らかになった。
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