日本植物病理学会報
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同一レタス葉におけるlux標識Pseudomonas cichoriiの増殖と移行および宿主の反応の経時的観察
曵地 康史鈴木 一実豊田 和弘堀越 守廣岡 卓奥野 哲郎
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1998 年 64 巻 6 号 p. 519-525

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抄録
Vibrio fisheri由来のluxCDABEオペロンを有するPseudomonas cichorii IBRC82のレタス葉における増殖と移行をVideo-intensified microscopy (VIM)カメラを用いて経時的に観察するとともに病徴発現との関係を調べた。lux由来の生物発光は,接種部位でまず接種2日後に観察され,その後,速やかに周囲に連続的に移行し,葉脈を通じて移行した。褐変は,生物発光が観察された部位に生じ,つづいて腐敗へと変わった。顕微鏡観察において,生物発光は表皮や葉肉の細胞間隙や維管束で認められた。これらの結果から,レタス葉における腐敗病の病徴の発現・拡大がP. cichoriiの細胞間隙と維管束における増殖と移行に伴って生じることが示唆された。レタス葉ディスクにP. cichorii IBRC82を減圧下で注入したところ,接種12時間後にディスク全体に生物発光が,接種36時間後にディスク組織の崩壊が観察された。真核生物のタンパク質合成阻害剤であるシクロヘキシミドを処理すると,生物発光は観察されたがディスク組織の崩壊は認められなかった。これらの結果から,P. cichoriiを注入したレタス葉の崩壊には,P. cichoriiの増殖とそれに対応した宿主組織のタンパク質合成が必要であることが明らかとなった。
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