抄録
モモ枝折病は従来,Fusicoccum属菌による病害とされていたが,新潟県において発生した罹病樹から分離された菌株の分生子形成細胞はフィアライドであり,in vitroでPhomopsis属菌に特徴的なβ胞子を形成したことから,本菌はFusicoccum属菌ではなく,Phomopsis属菌であると考えられた。この新潟分離株と,フランスで分離されたモモにcankerを引き起こすP. amygdali (synonym: F. amygdali),および本邦産でモモに果実腐敗や芽枯れ症状を引き起こすPhomopsis属菌のW型株とG型株とを用いて,胞子形態,コロニーの形態,ならびにモモ新梢基部に対する病原性を比較した.その結果,モモ枝折病菌は,コロニー形態が白色で特徴的な隆起があること,およびモモ新梢基部に特徴的な病徴を示すこと,の2点において,W型株やG型株とは異なった。しかし,欧州産のP. amygdali (Delacroix) Tuset et Portillaには諸性質が似ており,これと同一種であると同定した。