抄録
関東地方,および東北南部で畑地雑草のカナムグラの葉に,多数の褐斑を生じ黄化落葉する激しい病気が発生していた。病徴および病原菌の形態的特徴と文献調査により病原菌はホップ・カナムグラ褐斑病菌Pseudocercospora humuli (Hori) Guo et liuと同定された。
カナムグラへの培養菌叢磨砕液,分生子懸濁液の噴霧接種により約2∼4週間後に病徴が再現されたが,同属であるホップへの菌叢磨砕液の噴霧接種,カナムグラ病葉を健全葉にはりつける接種ではホップはまったく発病せず病斑は形成されなかった。再三の病原性検定でも分離菌は宿主として記録のある同属のホップには発病せず,病原性分化の起きている可能性を窺わせた。
分生子の発芽条件を調べたところ,分生子は25°Cで2時間後から発芽し,24時間後には93%が発芽した。5∼35°Cで発芽し,適温は25°C, pH 3では発芽せず,pH 4∼9でよく発芽した。水中,寒天培地上,空気湿度100%で良く発芽し,以下空気湿度89%まで発芽がみられ,85%では発芽しなかった。分生子の発芽能力は,室温で約2ヵ月間保たれた。