日本植物病理学会報
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百合の所謂バイラス病と寄主との關係
河村 貞之助
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1938 年 7 巻 3-4 号 p. 163-172_2

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抄録
本論文に於ては百合の所謂バイラス病と稱せらるるものの病徴が現在では相異なる5つに區別し得らるることを述べ,同時に其の5つの相異なる病徴と百合の37品種並にフリチラリア(Fritillaria)の2種類との間の關係を闡明せんとした。
5つの相異なる病徴とは(1)葉に緑色濃淡の斑を生ずる事を主徴候となすG. M. (green mottled mosaic,假稱,以下同樣), (2)葉に黄色絣状條斑を生じ組織の壞疽を合併症状となすY. M. (yellow streaked mosaic), (3)山百合に特發する急劇落葉性の莖のみ裸となり其の棒状の莖の先端が屈曲して「ステツキ」状となる事を主徴候となすC. N. (crook neck), (4)莖の節間短縮し一般に見る萎縮状を呈するものと,同じく萎縮状となり且つ葉が下方に捲曲して從來エローフラツト(yellow flat)と呼ばれ來つたものとを包括する1つの型で,此兩者は何れも葉に何等の斑點を生ぜず又萎凋する事なく總體的に黄化する處のR. S. (rosette),及び(5)鐵砲百合に見らるるもので稚葉,若葉並に花蕾に顯はるるOedem状の腫脹現象を主徴候とするP. L. (Pimple leaf) とを指す。
是等の病徴と品種との關係は表1の示す通りであつたが,その中で3種以上の病徴を表はした品種は山百合L. auratum LINDL.,作百合L. auratum var. platyphyllum BAKER,及び早生鐵砲百合L. longiflorum formosanum WALL.,黒軸鐵砲百合L. longiflorum gigantenum HORT.でありC. N. は山百合系統にのみ, P. L.は鐵砲百合系統にのみ見られ,又各品種を通じて一番普通である病徴は G. M. 及びY. M.で G. M.の方は37品種中20品種(内5は疑問)に見られY. M.の方は37品種中11品種(内1は疑問)に見られた。又R. S.型は鐵砲百合系統のものに於て他の原因に依る被害と紛れ易く最も重視す可きものと推察される。此表は勿論今後の精密な觀察と實驗とを俟つて修正増補さる可き性質のものである。
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