1. 本論文には稻種子中より分離せる
Bacillus A, B及C菌15系統の死滅時間と夫れ等を發育増殖せしめたる培養液水素イオン濃度との關係に就きて記載せり。
2. N/1 NaOH及びN/1 HClを以てpH 5.0, 7.0及び8.6に調節したるブイヨン培養液に28℃に於いて24時間培養せる供試菌の一定量を試驗管内のpH 7.0のブイヨン培養液に浮游せしめ,之を50±0.5℃の温湯中に一定時間浸漬して菌が發育増殖するや否やに依りて其の死滅時間を判定せり。
3. pH 5.0の培養液に培養したる
Bacillus A菌の死滅時間は15分と20分との間に存する雄神種々子より分離したる第22號菌を除き,其他の系統は何れも皆5分と10分との間,
Bacillus B菌の夫れは,供試菌系統の如何に關せず, 10分と15分との間,
Bacillus C菌の夫れは第5號菌は20分と25分との間,第6號菌は15分と20分との間に存するが如し。
4. pH 7.0の培養液に培養したる
Bacillus A菌の死滅時間は伊達近成種々子より分離したる第12及び第14號菌,吉神種々子より分離したる第2號菌及び身代起茨城1號種々子より分離したる第4號菌は15分と20分との間,無芒愛國種々子より分離したる第10號菌及び吉神種々子より分離したる第6號菌は20分と25分との間,雄神種々子より分離したる第14號菌は25分と30分との間,同第20號菌は30分と35分との間及び同第22號菌は50分と60分との間に存するが如し。又同培養液に培養したる
Bacillus B菌は供試菌系統の如何に關せず, 20分と25分との間にて死滅したれども,
Bacillus C菌は供試兩系統何れも60分間の處理に依りては死滅することなきが如し。
5. pH 8.6のブイヨン培養液に培養したる
Bacillus A菌の死滅時間は10分と15分との間に位する雄神種々子より分離したる第22號菌を除きて其他の系統は
Bacillus B菌の全系統の夫れと同樣何れも5分と10分との間に,
Bacillus C菌は第5號菌は15分と20分との間,第6號菌は10分と15分との間に存するが如し。
6. 菌の種類及び系統の如何に關せず,濕熱に對する菌の抵抗力は夫れが培養されたる培養液の水素イオン濃度に依りて著しき影響を被るものの如く, pH 7.0の培養液に培養されたる場合はpH 5.0或はpH 8.6の培養液に培養されたる場合より優れるが如し。而してpH 5.0の培養液に培養されたる菌の死滅時間とpH 8.6の夫れとを比較するに,
Bacillus B及びC菌にありては,供試菌の如何に關せず,前の場合は後の場合より大なれども,
Bacillus A菌にありては
Bacillus B及びC菌と同一傾向を示したる雄神種々子より分離したる第22號菌を除きて其他の菌系統に於ては何れの場合にも同一結果を示したり。
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