心身医学
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脳貧血調査表による脳貧血者, 非脳貧血者分類法を用いての判別の信頼性について : 歯科領域における
都 温彦
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1982 年 22 巻 3 号 p. 255-262

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抄録
著者は, 歯科治療時の偶発症である"いわゆる脳貧血(fainting)"を観察するために脳貧血調査表を因子分析にもとづいて作成した。この脳貧血調査表は, A : 歯科治療時の心身反応, B : 身体症状, C : 性格の3区分からなっている。この脳貧血調査表の3区分における得点を用いて歯科患者を脳貧血者(fainter)あるいは非脳貧血者(nonfainter)として判別する分類法を線型判別関数法によって作成した。この分類法は関数値をもとに4領域に患者を分類し, fainter, nonfainterとしてパターン認識するものである。今回の研究目的は, この分類法が今回の研究対象となった脳貧血経験者すなわち歯科治療時にfaintingを経験したことのあるもの, および非経験者すなわち歯科治療時にfaintingを経験したことのないものをどの程度判別できるかを観察し, 本分類法の信頼性を検討しようとするものである。研究対象は1979年10月から1981年5月までの間に福岡大学病院歯科口腔外科外来を訪れた新来患者の747名である。その内訳は, 男性の脳貧血経験者12名, 非経験者266名, 女性の脳貧血経験者49名, 非経験者420名である。結果ならびに考察 : 本分類法により脳貧血経験者では男性75.0%, 女性75.5%をfainterとして, 非経験者では男性80.1%, 女性80.2%をnonfainterとして正判別した。この結果は本分類法作成時の判別成績とほとんど同じであった。種々な判別結果の分析から, 本分類法は, 脳貧血経験者と非経験者に対する判別の再現性を有しており, その特色として, 歯科治療時faintingを起こしやすい脳貧血経験者と起こしにくい非経験者の特性, 新鮮な脳貧血経験者および習慣性の脳貧血経験者の特性をパターン認識しているものと考えられた。そして, 本分類法は歯科口腔外科患者のパーソナリティをfainter, nonfainterとして理解する1つの検査法として利用できるものと考えられた。
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© 1982 一般社団法人 日本心身医学会
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