心身医学
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妊娠・出産の合併症に端を発した心的外傷後ストレス障害(PTSD)の1例
市田 勝
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1996 年 36 巻 5 号 p. 431-434

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抄録

症例は初診時31歳の主婦。第2子妊娠中に切迫早産で他院に入院し, 帝王切開中に喉頭痙攣となり, 死の恐怖を体験した。その後, この一連の状況がありありと再現される体験が持続した。産科医の説明が不十分で, 患者を突き放す発言もあり, 疾病恐怖(心気症)と医療不信も生じていた。強い不安・焦燥感や感情の爆発, 不眠もみられた。症状は3ヵ月後も持続し, 総合病院精神科を受診した。患者の体験や不安の共感的傾聴, 教育的説明, 心気的不安に対する安全保証, 薬物療法などを行ったところ, 約1年半後に全治した。死の恐怖によるPTSDに, 医原性の心気症, 医療不信が加わったと考えられ, 医療者側は患者の体験や不安を傾聴し, 納得できる丁寧な説明をすべきと考えた。

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© 1996 一般社団法人 日本心身医学会
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