抄録
「性役割」をどのように捉えるかは諸家の意見の分かれるところであるが, 「自分は自分であることの自覚」とも表現される, 自我同一性の面からみると, これは単一ではなく多様である。こうした男性・女性が共同生活を営む時, それは「結婚」として表現される。そこで「性役割からみた中高年の心身医学」を筆者の経験した4症例をあげて検討した。その結果, 夫婦それぞれの性役割の混乱, 婦人科手術後における女性としての性役割の混乱, 夫婦それぞれの性役割の分離, 分散と統合への欠如, さらに男性・女性それぞれの性役割を抱えすぎ, 「どのような自分」として生きていこうとするのかの同一性選択の危機などがみられた。ことに, 産婦人科領域の心身症を扱う場合には, 「性」および「性役割」は看過できない問題である。