2002 年 42 巻 1 号 p. 61-71
目的:anorexia nervosa(AN)は種々の身体的異常を合併するが, 消化管病変としては, 上腸間膜動脈症候群などが知られている.なかでもイレウスを合併すると, 病態の急激な悪化や, 死に至る可能性もあり, ANの治療過程における重要な問題である.この研究の目的はANにおける, イレウス発症の危険因子を明らかにし, 予防法を検討することである.方法:対象患者は1998年1月〜1999年10月の期間にわれわれの大学病院および他の2つの市中病院で入院治療を受けた55人のAN女性患者である.対象はイレウス合併群と非合併群の2つのグループに分けられた.診療録に基づき, レトロスペクティブに以下の項目が調べられた.年齢, BMI, 罹病期間, BMIの減少率(DRB), ANのサブタイプや血液検査データなど.上記パラメータは2群間で統計解析された.結果:イレウス発症は55例中8例(14.5%)であった.イレウス合併例8例中6例は, イレウス発症前に急に食餌量が増えていた.イレウス合併群のBMI減少率はイレウス非合併群のそれより有意に大きく(p=0.0073), イレウス合併群はイレウス非合併群より急な体重減少が示唆された.結論:AN患者で, BMI減少率が大きく, 急に食餌摂取量が増えるとイレウスを発症する危険性が示唆された.食餌量は緩徐に増量すべきである.