心身医学
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相補代替医療とsalutogenesis(健康創成論) : 線維筋痛症の治療を通じて(日本における代替・相補医療)
永田 勝太郎
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2005 年 45 巻 8 号 p. 589-597

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抄録

現代医学的方法はpathogenesis(病因追及)中心であり, 伝統的東洋医学や相補代替医療, 心身医学はsalutogenesis(健康創成)中心の考え方である.Pathogenesisでの健康は絶対的健康であり, 健康・病気・死はそれぞれ個別の概念であるが, salutogenesisの視点から経時的に人間の病態を考えると, 健康→病気(機能的病態→器質的病態→致死的病態)→死と進み, それぞれのレベルでの相対的健康がある.生体反応の経時的な評価はgeneral adaptation syndromeにみられる.生体反応はストレスによる生体の摩耗とそれに対する抵抗力・修復力を評価することである.General adaptation syndromeと17-KSS(S), 17-OHCS(OH), S/OH比, 東洋医学的証には相関がある.新しい時代の医療(全人的医療)は, 現代医学によるpathogenesis, 伝統的東洋医学や相補代替医療・心身医学によるsalutogenesis, さらに患者個々の自律性(自己責任による自己決定)の鼎立の上に成り立つといえよう.線維筋痛症は難治性の疼痛疾患である.その治療を例にとり, pathogenesis, salutogenesis, self controlの順に治療を進め, 疼痛治療を行った.これは相補代替医療を行うコメディカルとpathogenesisを行う医師との協調の賜物といえよう.

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© 2005 一般社団法人 日本心身医学会
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