抄録
近年, パニック障害患者に脳波異常が多いことが指摘されている.われわれは, 脳波異常を有するパニック障害患者を経験し, 脳波異常を考慮した治療を行った.症例1 : 36歳, 女性.めまい, 動悸, 冷汗などを伴う発作を認め, パニック障害と診断された.脳波上突発性異常が認められたためバルプロ酸を投与, 発作の消失が認められた.症例2 : 44歳, 女性.焦燥感, めまい, 吐気を主訴に来院.分娩時失神発作の既往あり.脳波上鋭波の多発を認め, バルプロ酸投与開始.しかし症状の改善は認められず, スルピリドと抗不安薬にて速やかな症状改善を認めた.症例3 : 58歳, 女性.突然のめまい感, 不安感にて長期間工チゾラムを過量内服.脳波上突発性異常を認めたため, カルバマゼピンの投与を開始した.その結果, 突然のめまい感は消失したが不安症状は続き, エチゾラムの漸減は困難であった.3症例をそれぞれ3つ異なる病態ととらえ, それぞれの評価・経過・治療についてまとめた.