心身医学
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神経性食欲不振症の外来治療における「感想文」を用いた記述式自己表出法の有用性
大隈 和喜
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2010 年 50 巻 2 号 p. 147-154

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抄録

神経性食欲不振症(AN)の治療上の最初の障壁に,患者との対話の困難さがある.深町は,本症患者が発語は困難でも記述は可能な事実を発見し,行動制限療法に感想文を導入した.昨今,長期入院が困難になり,ANの外来治療の質や効率を向上させる目的で感想文による記述式自己表出法を導入している.典型的2症例の治療経過を提示した.感想文上の自己表出で患者との対話が早期に可能となり,患者の理解と信頼関係の構築が進んだ.食や体重にまつわる強迫的自動思考が強固な治療初期には,治療的キーワード"悪い自分","良い自分"の導入がその修復に役立った.一方,文章には徐々に身体感覚,感情のよみがえりが認められ,日常活動の描写が増加し,治癒の確認ができた.中盤以降,関心は対人,対社会へ移行し,治療は社会復帰支援となった.感想文上の自己表出によりANの外来治療が活性化,効率化できる可能性を指摘した.

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© 2010 一般社団法人 日本心身医学会
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