2012 年 52 巻 4 号 p. 277-285
神経性過食症が神経性食思不振症の一亜型として紹介されてから30年が経ち,摂食障害の臨床像,精神病理は大きく変化した.現在,多くのガイドラインが認知行動療法を最もエビデンスを有する神経性過食症への精神療法的アプローチとして推奨している.一方で精神病理の複雑化に伴って感情不耐性,完全主義,中心的な自己評価の低さ,対人関係の困難までを扱う強化認知行動療法へと移行している.また,青年期の神経性食思不振症には家族療法の1つであるモーズレイアプローチが,神経性過食症には対人関係療法の有効性が報告されている.しかし,大学病院を受診する摂食障害患者の精神病理はさらに複雑化しており,全般性の社交不安障害をベースとする症例への認知行動療法や,多衝動性への弁証法的行動療法も考慮しなければならない.