2012 年 52 巻 8 号 p. 734-744
本研究の目的は,成人期のアトピー性皮膚炎(成人型AD)患者の不安感受性について検討し,クラスター分析により成人型AD患者特有の不安パターンを明らかにすることであった.不安感受性についてADを有さない成人と比較した結果,成人型AD患者の得点は高いものの有意差は認められなかった.さらに,クラスター分析を実施した結果,低不安(LA),高不安(HA),身体関連不安(PHA)の3つのクラスターとして解釈することが妥当であると判断された.これら3つのクラスターすべてについて対象者の割合を検討したところ,すべての尺度において低得点を示したLAには一般成人が有意に多く,すべての尺度において高得点を示したHAおよび痒みに対する不安と身体的な警戒のみが高くなるPHAには成人型AD患者が有意に多いことが示された.以上の結果から,成人型AD患者が抱える不安へのアプローチには,疾患特異的な不安を考慮する必要性が示唆された.