心身医学
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摂食障害治療の最近の工夫 : 身体面の治療と心理療法について(摂食障害の治療の進歩,2012年,第53回日本心身医学会総会ならびに学術講演会(鹿児島))
河合 啓介
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2013 年 53 巻 9 号 p. 834-840

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抄録

本稿では,九州大学病院心療内科での神経性食欲不振症(AN)患者の入院治療を通じて,AN治療の最近の治療上の工夫について心身両面から述べる.身体面:身体的要因による緊急入院治療への取り組みは大きな課題である.われわれは,(1)BMI13〜14kg/m^2までは,飢餓時期においては,脂肪分解によるエネルギー産生が中心となり,それ以下のBMIでは,蛋白異化が中心となること,(2)除脂肪量(筋肉・内臓組織・血液量など)が低下するほど身体的要因による緊急入院のリスクが有意に増加すること,(3)BMIが12〜13kg/m^2以下のANの体重増加期は,脂肪の合成よりも除脂肪合成が優位であること,(4)入院時BMI12kg/m^2以下の症例でも,高リン含有の栄養補助食品(アルジネード^[○!R] 125ml)を併用すると簡便にrefeeding症候群を予防できることを報告し,BMI13kg/m^2をキーポイントとした身体管理の重要性を提言している.心理面:当院では,入院症例に対して多くは「行動制限を用いた認知行動療法」を行っている.体重が増えなければ治療が進まない形式の心身両面への統合的アプローチである.最近は入院治療中に,強い他者批判や社会あるいは家族との関係に課題を持ち続ける事例に対して,内観療法を併用することがある.この2つの心理療法には類似点があり,併用すると相乗効果があると思われる.

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© 2013 一般社団法人 日本心身医学会
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