抄録
せん妄は多要因からなる異種の病態の集まりと考えられ,精神運動性行動によって過活動型,低活動型および混合型の3つの亜型に分けられる.中でも低活動型せん妄は,がん患者では多く半数にみられ,その症状としては,無関心,注意減退,発語が少なく緩徐,不活発などが挙げられる.このような低活動型せん妄は,過動型せん妄と同じく,患者や家族に与える苦悩が大きいが,症状が目立ちにくいため,臨床現場では発見されないまま見過ごされることも多い.さらに,うつ状態と間違われてしまうこともある.治療には,器質要因を改善するための管理と,向精神薬を用いた薬物療法が必要であるが,終末期のせん妄では,治療目標を完全な回復ではなく,症状のコントロールにおくことも必要になる.