過敏性腸症候群患者に対する治療方針の選択にあたっては,科学的根拠(エビデンス)に基づく医療(evidence-based medicine:EBM)と「物語(ナラティブ)」に基づく医療(narrative-based medicine:NBM)を利用できる.EBMの考え方では,メタアナリシスをはじめとしたエビデンスレベルの高い臨床研究成果に基づいて有効性が高い治療法を優先的に選択する.NBMの考え方では,患者の病態仮説に応じて個々に治療方針を決定する.EBMとNBMを互いに補完することによって,さらに改善を導きやすい治療法を選択できるだろう.いうまでもなく,選択された治療効果を高めるためには良好な患者-医師関係を築いておくことが重要である.