2015 年 55 巻 7 号 p. 857-863
生活習慣や治療行動(食事や運動など)は糖尿病患者の病状を左右する重要な要素である.患者を適切な治療行動に導くために,従来,糖尿病治療者は教育・指導に注力してきた.近年では,患者の問題解決能力を尊重して,その能力の発揮を援助する考え方(糖尿病エンパワーメントなど)が紹介され,効果も報告されている.しかし,中には自身の能力を発揮するのが難しい患者も存在する.そのような患者を効果的に援助するためには,より深く患者を理解することが必要である.本稿では,糖尿病患者を理解するためのかかわりについて,筆者の学びの過程を示しながら考察した.患者の大きな変化につながるような言葉や,技法が明確な心理療法に注目が集まりやすいが,その前段階の土台作りの重要性についても強調したい.