2016 年 56 巻 12 号 p. 1192-1196
Acceptance and commitment therapy (以下, ACT) を用いたケースでの心理教育の実践例について, 模擬事例をもとに報告した. 模擬事例としては, 医療現場での個別の心理療法の場面, その中でも心身医学的問題として過敏性腸症候群のケースを扱った. ACTの心理教育は, 随伴性と悪循環の理解を重視する点は従来の認知行動療法と共通するが, 疾患ごとのモデルや特定の症状モデルを用いることはほとんどないという点が異なる. ACTでは, クライエントが現実を体験することに重点を置くが, 並行してそれらの体験を通して体験の回避や認知的フュージョン, アクセプタンスとコミットメントという概念の理解を促進することも目的としている. したがってACTは, 他の療法に比しても心理教育的な要素を重視する心理療法ととらえることができるかもしれない.