抄録
こじれた痛みには原因がそれなりにある. 現状では患者の訴えは理解しがたいと受け止められており, 医療者にとっては負担になる場合がある. 理解されることを切実に望んでいるが上手に表現できず, 「過剰な説明」に追われ, 空回りしながら説明に疲れ果てる患者. 一方で静かな患者がいる. 社会生活の中で「常態化」, 「pacing」, 「持ちこたえ」, 「身体の作り変え」を行って, 痛みとの折り合いをつけ, さらには「知覚・認識の作り変え」まで行われているのではないかと筆者は考える. しかしそのことで疾患をよりわかりにくくし, 治療者にもみえなくする. 「沈黙の患者」となってしまうのだ. どの患者も痛みのバックグラウンドを理解され, 一つひとつ改善して, 快方に向かっていることを実感できれば, 希望をもてると思う. そんな試みが始まっていることは患者にとって心強い. こじれた痛みと悩みを患者の相談事例の中から紹介し, どのようにひもとけばよいのか, 一緒に考えていただければと思う.