2017 年 57 巻 10 号 p. 1013-1019
災害復興におけるソーシャル・キャピタルの役割が注目されている. ソーシャル・キャピタルとは 「社会関係資本」 と訳され, 他者への信頼感, 助け合いの意識, ネットワーク, 社会参加などで評価される人間関係の強さを表す概念である. 先行研究において, 災害発生時, ソーシャル・キャピタルの豊かな地域ではPTSDやうつといった精神疾患の発症リスクが低いとの報告も行われている.
本研究では福島第一原子力発電所事故からの避難者を対象にソーシャル・キャピタルとメンタルヘルスの関連について調査を行った. その結果, 高齢者を対象とした調査, 子育て中の母親を対象とした調査のいずれも, 個人レベルのソーシャル・キャピタルが豊かなほどメンタルヘルスが悪化しにくいことが明らかとなった.
今後, ソーシャル・キャピタル醸成の視点を取り入れた災害復興政策を行っていくことが重要であると考えられた.