2018 年 58 巻 8 号 p. 734-739
反復するげっぷと腹部膨満感を主訴とする27歳男性患者に対して, 各種身体検査にて器質的な消化管疾患を除外し, RomeⅢ基準に基づいて空気嚥下症と診断した. 一般的治療に対して反応性に乏しく, 職場不適応といった心理社会的背景をもつ症例と考えられたので, 生物心理社会的な治療アプローチを試みた. 生物学的観点からは, 空気嚥下の動画や腹部X線写真での腸管ガス像の変化といった生物学的変化を明示して病態理解を促した. 心理的観点からは, 失感情症傾向に対して受容的に関わりながら感情表出を促すとともに, 過剰適応傾向に対して自分の趣味に時間を割くことの重要性を説明して行動変容を促した. 社会的観点からは, 患者の知能特性として処理速度が有意に低いことに基づき職場における環境調整を行った. このような多角的治療アプローチを有機的に組み合わせることで, 難治性消化管症状の改善につながった空気嚥下症症例を経験したので報告する.