本稿では, 老年期の身体表現性障害や説明困難な身体症状 (老年期MUS) の特徴に基づいた病型分類を示した. 老年期MUSはその臨床経過から, 一過性の身体化, すなわち適切な身体診察と検査などの評価で患者が安心を得られれば速やかに症状が落ち着く一群, 心気不安型, すなわち不安が強まり症状が遷延しているが環境調整や薬物治療で数カ月~半年程度で改善が見込める一群, 強迫型, すなわち認知症もなく活動性の高い高齢者が, 身体的な衰えに伴い各種症状を呈する一群, 症状固定型の4つに分類できる. 老年期MUSへのアプローチとして, 1. 本人の解釈モデルを聴取, 2. 本人の不安に応じた検査や説明によって保証, 3. 身体症状に対する対症療法をしながら経過をみる, 4. 自律神経の働きを整える方向で指導 (生活リズムなど), 5. 症状中心の生活から患者本来の生活へと患者の焦点を移していく, 6. 患者が治療の主役であることを常に意識する, が推奨される.