2020 年 60 巻 4 号 p. 327-332
私設相談室で取り扱う老年期の来談者を通して, 老年期の心理的特性, その理解, 対応について論じた.
特徴的なことは, 彼らの訴えは, 単一ではなく, 現実的問題のうえに身体症状や, 不安, うつ状態などの精神症状を併せもつことが多いことである. また, その内面には老年期に普遍的にみられる身体的, 心理的, 環境的な喪失の問題が存在していた. これらを解決していく過程で, 来談者たちには, 喪失を受容するというのみならず, 積極的に再構築していこうとする傾向もみられた.
今日の老年期の人々への理解にはその個別性や多様性を尊重することが重要である.