心身医学
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原著
小児科で経験する過敏性腸症候群の特徴
藤井 智香子岡田 あゆみ重安 良恵塚原 宏一
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2021 年 61 巻 1 号 p. 57-63

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抄録

過敏性腸症候群 (irritable bowel syndrome : IBS) は児童・思春期の代表的な機能性消化管疾患であるが, その実態については不明な点も多い. IBSは心理的ストレスの影響を受けやすく, 患者の心理社会的背景を理解することは適切な治療介入につながると考えられる. 児童・思春期のIBS患者の特徴を明らかにすることを目的に, 岡山大学病院小児科を受診したIBS患者のうち発症が18歳以下であった69例の性別や併存疾患などの特徴について検討を行った. 男性35例, 女性34例で, 59例は不登校状態にあり, 外出困難をきたしている症例もあった. 併存疾患として起立性調節障害やアレルギー性疾患を有する症例が多く, 24例が自閉スペクトラム症 (autism spectrum disorder : ASD) の診断を受けていた. ASDの感覚過敏やこだわりが強いという特性が, 症状の遷延や訴えの増加につながる可能性があり, 発達特性に留意して診療を行うことが必要であると考えられた. また男性に外出困難を伴う症例を多く認め, このような症例では特に, 環境調整や心理療法を含めた対応が有効だった.

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© 2021 一般社団法人 日本心身医学会
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