心身医学
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教育講演
難治性疼痛の病態メカニズム
―分類と考え方―
牛田 享宏
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2023 年 63 巻 6 号 p. 507-511

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抄録

痛みは誰しもが経験するものであるが,病気やけがが治っても痛みが残るなどすると非常に苦しい経験が続いてしまうことになる.国際疼痛学会(IASP)は3~6カ月続く痛みを慢性疼痛と定義しているが,長引いているケースにおいては器質的な要因だけでなく心理社会的な要因も関与して持続することも多い.そのため世界保健機関(WHO)とIASPでは国際疾病分類(ICD-11)の中でその分類を定めており,骨関節あるいは神経系の問題に直接的に起因するタイプを慢性二次性疼痛症候群とし,器質的な要因があってもそれだけで説明が困難なものを慢性一次性疼痛と分類している.慢性二次性疼痛症候群のメカニズムについては神経障害性疼痛や侵害受容性疼痛などのモデル動物実験などを通じて明らかにされてきている.一方で慢性一次性疼痛は臨床的には線維筋痛症,慢性腰痛,過敏性腸症候群,舌痛症などがカテゴリされるが,これらについては多彩な養育経験や環境因子などが関与しており少なからず器質的な要因もかかわって,神経系の感作が引き起こされる痛覚変調性疼痛の病態を形成していることも多い.現在,痛覚変調性疼痛についても基礎医学的なメカニズムの解明が進んできているところであり,それらを包括した形での治療の方向性の模索が必要と考えられる.

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© 2023 一般社団法人 日本心身医学会
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