近年,国際疼痛学会は痛みの分類において,明らかな組織や神経の損傷を伴わずに生じる痛みを痛覚変調性疼痛と定義した.背景にあるメカニズムとして推察されているものに中枢性感作がある.中枢性感作とは,上行性の刺激に対する中枢神経内における侵害受容ニューロンの興奮性が増強され,痛みの感受性が上昇する現象とされている.しかし,痛覚変調性疼痛と分類される痛みには,中枢性感作とは異なるメカニズムがあることも示唆されている.例えば,社会的痛み,身体化,痛みへの不適切な認知行動的反応,精神疾患に由来するものなどがある.臨床的にはそれぞれ患者特性,経過,治療の反応性に違いがあるように思われる.そのため,その違いを区別することは病態理解,治療方針決定において有用であると考えられる.今回,痛覚変調性疼痛の背景にあるメカニズムについて,文献的考察および臨床的観点から検討したい.