2024 年 64 巻 6 号 p. 500-504
バセドウ病は強いストレスなどの心理社会的要因と発症との関連が示されている.また,再燃を繰り返す,治療開始後数年経っても寛解しないなどのいわゆる難治症例において,心理社会的要因の関連も示唆されている.これまでに,ライフイベントや日常いらだちごとのほか,抑うつ,神経症傾向,アレキシサイミア,過剰適応傾向などとの関連が報告されている.バセドウ病では抑うつや不安をしばしば伴うが,甲状腺機能の正常化により必ずしも改善しないことから,本症に伴う抑うつや不安は甲状腺ホルモン過剰のみで説明することができない.
橋本病は甲状腺機能低下症が抑うつ症状を引き起こすという観点のみならず,アレキシサイミア,抑うつ,不安などとの関連が報告され,本症においても心身相関の存在が示唆される.しかし少数例での検討が多く,今後さらなる研究の蓄積が必要と思われる.