抄録
1993年7月から1997年11月の間に,当科において骨髄移植を行った21例の腎合併症の実態について検討した。腎機能障害をきたした症例は7例で,5例は急性期の腎機能障害を,1例は急性期の腎機能障害が改善した後8カ月目に溶血性尿毒症症候群 (HUS) を,残りの1例は移植後10カ月目にBMT Nephropathy (BMT NP) を発症した。腎傷害性薬物 (アミノグリコシド,FK506,MTX長期投与) を使用した症例,移植片対宿主病 (GVHD) の強い症例,敗血症を合併した症例では腎機能障害の合併頻度が有意に高かったが,複数の要因が絡んでいるものが多く,原因の特定は困難であった。BMT NPを発症した症例は1例のみであったが,観察期間が短く,今後さらに長期にわたる腎機能評価が必要と考えられた。