抄録
胎生期に剖検され多嚢胞性異形成腎と診断された5例 (在胎18週から32週) について各症例250枚の連続切片を作製し,三次元的観察を行うことにより,嚢胞形成過程,閉塞機転が働く部位を検討した。全嚢胞に占める糸球体嚢胞の割合は,在胎18週48.5%,19週28.4%と胎生早期程高かった。嚢胞形成を認めるネフロンを三次元的再構築した結果,異形成腎においても発生初期には傍糸球体装置を含むネフロンの基本的構築が形成されており,糸球体から集合管までに内腔の閉塞は認められなかった。この一連のネフロンのどの部位にも嚢胞は形成され得る。集合管以下の尿路閉塞により閉鎖空間となったネフロンが,初期糸球体濾過液 (原尿) 産生に伴い嚢胞化し,異形成腎を発症する可能性が示唆された。