1999 年 12 巻 2 号 p. 119-126
Heme oxygenase-1 (HO-1) は,ヘムを酸化的に分解するミクロソーム酵素で,酸化的ストレスから細胞を保護する働きがあると言われている。今回,世界で初症例となるHO-1欠損症例を経験した。患児のHO-1遺伝子は複合ヘテロ接合体で,母親由来のアリルはexon2の完全欠損,父親由来のアリルはexon3の2塩基欠失であった。患児の末梢血リンパ球 (PBL) およびlymphoblastoid cell line (LCL) では,ヒ素,カドミウムなどの刺激でHO-1は誘導されず,腎組織中にもHO-1の発現は認められなかった。各種腎疾患症例における検討では,尿細管上皮細胞にHO-1の発現を認めたが,糸球体固有細胞には発現が認められなかった。なお,患児の経時的な腎組織変化は,糸球体変化よりも尿細管・問質病変の進行度が非常に強かった。今回の検討より,HO-1は,in vivoにて,糸球体よりむしろ尿細管においてより重要な役割を担っているものと考えられた。