日本小児腎臓病学会雑誌
Online ISSN : 1881-3933
Print ISSN : 0915-2245
ISSN-L : 0915-2245
原著
Fanconi-Bickel症候群 (糖原病XI型) における腎病変の検討
中島 滋郎志水 信彦平井 治彦島 雅昭赤木 幹弘乾 幸治岡田 伸太郎
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 12 巻 2 号 p. 131-134

詳細
抄録

 Fanconi-Bickel症候群 (糖原病XI型) は肝腎でのグリコーゲン蓄積,Fanconi症候群およびガラクトース代謝異常を呈する先天代謝異常疾患である。今回,当科で長期間加療している本症の2例の腎機能および腎組織について報告した。症例1は現在22歳の男性,症例2は現在24歳の女性。症例1は1歳6カ月時に,症例2は4歳時にそれぞれFanconi症候群を伴う糖原病 (欠損酵素不明) と診断された。
 2例とも糸球体機能は正常であったが,低身長,腎性くる病,腎性糖尿,汎アミノ酸尿,近位型尿細管性アシドーシス,低リン血症などの近位尿細管障害を認めた。症例1では高カルシウム尿症を認め,10歳時に腎石灰化,20歳時に大脳基底核の石灰化を指摘された。症例2では高カルシウム尿症,腎および頭蓋内の石灰化は認めなかった。症例1の腎生検組織では,尿細管上皮の壊死と石灰化,近位および遠位尿細管とその周囲でのPAS陽性物質の沈着を認めた。一方,症例2の腎生検組織では明らかな尿細管の変化やPAS陽性物質の沈着は認めなかった。2症例ともに臨床的および生化学的にはFanconi-Bickel症候群と診断されるが,腎組織像や高カルシウム尿症の有無など異なる点も多い。ゲノムDNAを用いたglucose transporter 2 (GLUT 2) 遺伝子の検討では,症例1ではTrp 420 stopのホモ接合子異常を認めたが,症例2では異常は検出できなかった。以上のことから,本症候群がGLUT2遺伝子以外の異常によっても生じる可能性が示唆された。

著者関連情報
© 1999 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top