日本小児腎臓病学会雑誌
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原著
小児期IgA腎症におけるlisinoprilの治療効果についての検討
諸岡 正史木曽原 悟美濃和 茂矢崎 雄彦
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1999 年 12 巻 2 号 p. 135-139

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抄録

 成人期各種腎疾患においてアンジオテンシン変換酵素阻害剤 (以下ACEI) は尿蛋白減少効果のみならず,糸球体硬化抑制作用を有し,予後を改善するとの報告がみられる。我々は,軽度から中等度の蛋白尿を呈し,腎組織像で巣状メサンジウム増殖像を呈する小児期IgA腎症患者に対して長時間作用型ACEIであるlisinoprilをdipyridamoleに併用し,治療開始からの尿蛋白の推移および腎組織像に対する影響を検討した。2年の経過観察中,尿蛋白はdipyridamole単独使用例に比して良好な減少を認めた。
 腎組織像に対する影響は重松の提唱するIgA腎症の組織学的障害度 (grade) と進行度 (stage) のスコアを用いて評価した。治療開始から約2年後の腎組織像はlisinoprilを併用群,dipyridamole単独使用群ともに進行度スコアの上昇を認めたが,dipyridamole単独使用群では有意に上昇し,スコアが上昇した症例数も多かった。lisinoprilの投与により糸球体硬化進展につながる糸球体障害変化を軽減させたと考えられる。
 以上の結果はACEIの投与は巣状メサンジウム増殖像を呈する小児期IgA腎症においてその長期予後を改善させる可能性を示唆するものと考えられる。

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© 1999 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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