1999 年 12 巻 2 号 p. 165-168
小児の神経性食思不振症 (以下本症と略す) における電解質異常の頻度や成因をあきらかにするため,当科に入院した本症患児17名 (男1名,女16名,平均年齢14歳) を対象に検討を行った。その結果,(1)入院時の血清カリウムおよびリン濃度 (それぞれ3.7±0.6mEq/L,3.0±0.8mg/dl,平均値±標準偏差) は退院時のそれ (4.2±0.3mEq/L,4.5±0.7mg/dl) に比較して有意に低下しており (p<0.05),低カリウム血症 (3.4mEq/L以下) および低リン血症 (4.Omg/dl未満) の頻度はそれぞれ24%,92%であった。(2)しかし入院時の肥満度とこれらの血清電解質濃度の間に有意な相関は認められず,また尿中喪失量増加の所見も得られなかった。
以上より,本症においては摂取量の不足に起因する低カリウム血症,低リン血症が高頻度に存在しており,本症患児の診療においてはこれらの異常への認識が必要であると思われた。