2000 年 13 巻 2 号 p. 151-156
今回私達はサルモネラ感染症による急性腎不全の1例を経験したので報告した。症例は7歳女児。平成11年9月14日から高熱,頻回の水様性下痢,嘔吐があり同日近医を受診,急性胃腸炎と診断され投薬を受けた。9月16日上記の症状が続き,全身状態不良のため当科に紹介され入院となった。患児は入院時顔色不良で血圧が低値でありショック状態であった。乏尿,筋原性酵素ならびに尿素窒素,クレアチニンの上昇から横紋筋融解症,急性腎不全と診断した。血液透析を2回施行したのち腎機能は徐々に軽快した。経過中播種性血管内凝固症候群 (DIC) を合併したが,軽快し第32病日に退院した。便培養でSalmonella typhimuriumが検出された。本症例ではDICや横紋筋融解症や高度の脱水などの様々な要因が重なって急性腎不全が発症したと考えられる。本症のような例はまれであり,若干の文献的考察を加えて報告した。