抄録
1980年1月から1996年12月までの17年間に,当科に入院した川崎病180例を入院時血清ナトリウム (Na) 値によって,Na正常群 (Na≥135mEq/l) 102例とNa低下群 (Na<135mEq/l) 78例に分け,その臨床像,検査値,心合併症について検討した。両群で年齢,性別,発熱期間に有意差は認めなかったが,Na低下群で有意に下痢の合併例,ガンマグロブリンの投与例が多かった。検査値では入院時好中球数,ヘモグロビン,総蛋白,CRPで有意差が見られた。冠動脈病変の合併は,Na低下群で21例 (26.9%),Na正常群で14例 (13.7%) と有意にNa低下群で多かった。またNa低下群の1例にSIADHの合併を証明した。川崎病に合併する低Na血症は決して稀なものではなく,臨床的には炎症反応の強いものに多く,冠動脈病変を早期に予測する指標になり得ると考えられた。