抄録
近年,在日外国人は増多の一途をたどっており,特に東北地方においては中国からの移住者が増加している。日常診療において生活習慣や社会背景などの違いから様々な問題が生じている。急性疾患の治療,管理においてでさえ外国人の患者との意志の疎通は困難である。まして慢性疾患の管理となると問題は大きく複雑になるため医師一人の対応には限界がある。
今回我々は,移住前からネフローゼ症候群を発症し,寛解を得ぬまま移住してきた中国人の1男児を経験した。患児は検査,入院,治療を拒否し,漢方薬を個人輸入して内服を続け,最終的には末期腎不全に陥った。この経験から管理上の問題点として,(1)患者側の問題点,(2)医療側の問題点,(3)制度の問題点を考察するとともに,(4)病理組織所見,診断に関する疑問点についても考察する。