抄録
われわれは,20年間に55例の小児腎移植後の管理を行った。その特徴として,小児慢性腎不全は先天性疾患が多く,移植手術前後に泌尿器科的処置が必要であった例が7例と多いことであった。最近5年の当院の生着率は1年で100%,5年で97%であり,小児腎移植自体は確立された医療である。しかし,感染症や移植後の糖尿病,リンパ増殖性疾患等重篤な合併症もあり,克服しなければならない問題点もある。移植腎が廃絶した症例が6例あったが,そのうち3例はnon-complianceであった。それ以外にも怠薬をしたことがあると思われる患児が7例あり,non-complianceは思春期の特徴であると思われた。今後出てくる問題点として,次第に移植腎機能が悪くなり,次の腎臓代替え療法を考えなければならない症例や,就職・結婚・妊娠などがある。これらに対応できるよう,小児腎移植はチーム医療であるとともに,全人的な医療が必要である。