日本小児腎臓病学会雑誌
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総説
ウイルス性腎炎の病態解明
―特に慢性腎炎モデルマウスを用いたウイルス感染による腎炎増悪機序の解明
川崎 幸彦
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2008 年 21 巻 2 号 p. 138-145

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抄録

 私達は,腎障害との関連性が注目されているコクサッキーウイルスB4 (CoxB4) をICRマウスやIgAモデルマウス (HIGAマウス) に投与することで,CoxB4の腎炎惹起と腎炎増悪に関する検討を行った。CoxB4をICRマウスに単回静注すると一過性メサンギウム増殖性腎炎が認められた。CoxB4の反復投与では,メサンギウム領域へのIgGやIgA沈着を伴うびまん性メサンギウム増殖性病変が惹起された。一方,HIGAマウスを用いた実験では,CoxB4の頻回投与にてIgA腎症類似の腎病変が早期により高度に出現した。この病態には,CoxB4投与による直接的な内皮細胞障害に加え,メサンギウム異物処理能の低下あるいはCoxB4感染によって放出された各種サイトカインの影響が示唆された。また,ラット培養メサンギウム細胞や単離糸球体に生CoxB4を投与すると,トロンボキサンB2 (TXB2) や活性酸素の産生亢進がみられたことから,これらchemical mediatorもウイルス感染による腎障害の病態に関与していることが推測される。

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© 2008 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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