日本小児腎臓病学会雑誌
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総説
シクロスポリン (CyA) 療法と生後残存未熟糸球体 (F-GL) のmaturation failureに関する検討
藤田 真輔岡田 満柳田 英彦杉本 圭相竹村 司
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2008 年 21 巻 2 号 p. 134-137

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抄録
 CyAは,適正な血中濃度を厳守した場合,約2年間は腎障害も少なく,安全に使用できる。私たちは,通常のCyA療法を実施したにもかかわらず,約2年間の投与で著明な糸球体虚脱~硬化に至った複数の症例を経験し,その一因に,未熟糸球体の残存が関与している可能性を見出した。対象は4名の頻回再発型ネフローゼの男児であり,CyAの使用量は,61.4±8.2ng/ml。初回投与年齢は1.4~5.2歳であった。未熟糸球体の判定は,一般顕微鏡による構造観察と免疫組織学的検討を総合して決定した。CyA療法前腎生検で,全糸球体のうち,23~39%に未熟糸球体の出現が認められた。2年後の評価では,成熟が停滞している未熟糸球体は,依然10~25%残存し,さらに5~17%の糸球体では,未熟糸球体のまま虚脱~硬化に至る像が観察された。残存未熟糸球体と虚脱~硬化糸球体の和は,CyA療法前の未熟糸球体の総数とほぼ一致していた。
(結論) CyAは,未熟糸球体の生後成熟化障害をきたすことが示唆された。
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© 2008 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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