日本小児腎臓病学会雑誌
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症例報告
バルプロ酸によるFanconi症候群から急性腎不全を呈した難治性てんかんの1例
田中 幸代鈴川 純子荒木 敦今井 雄一郎高屋 淳二谷内 昇一郎蓮井 正史金子 一成
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2008 年 21 巻 2 号 p. 182-187

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抄録
 バルプロ酸 (valproate: VPA) によるFanconi症候群 (以下,本症) を呈していた22歳の重症心身障害者が,肺炎を契機に急性腎不全を合併した。本症に急性腎不全を合併した報告は,検索した範囲では見あたらなかった。
 患者は生後8ヵ月からWest症候群の治療としてVPAを投与されており,定期的な血液,尿検査を受けていたが,21歳7ヵ月から低尿酸血症を,21歳9ヵ月から尿糖・蛋白尿を認めた。22歳3ヵ月時,精査で紹介され,汎近位尿細管障害 (腎性尿糖,汎アミノ酸尿,低リン血症,リン酸尿,低尿酸血症) を呈し,本症と診断した。そのため,VPAの中止を試みたが,痙攣が頻発し継続せざるを得なかった。本症と診断してから3ヵ月後に肺炎に罹患した際に急性腎不全にいたったが,保存的療法と抗酸化物質 (ビタミンCおよびビタミンE) の投与のみで回復した。
 一般に特発性腎性低尿酸血症 (多くが尿酸トランスポーター遺伝子・URAT1の変異による) では,運動後急性腎不全を呈することがよく知られている。その病因として,「運動後に産生される活性酸素が抗酸化物質である尿酸の不足により適切に処理されないための活性酸素傷害」が考えられている。
 以上のことを考え合わせると本患者の腎不全の原因として,特発性と同様に,二次的な低尿酸血症が,抗酸化力の低下を来し,急性腎不全のリスクファクターとなった可能性が示唆された。
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© 2008 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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