日本小児腎臓病学会雑誌
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原著
小児IgA腎症, 紫斑病性腎炎におけるIgA-IgG共沈着の意義の多角的検討
金本 勝義飛田 尚美安齋 未知子松村 千恵子宇田川 淳子北村 博司城 謙輔倉山 英昭
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2009 年 22 巻 2 号 p. 116-121

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抄録

 小児IgA腎症におけるメサンギウム領域へのIgA-IgG共沈着の意義について明らかにするため,初回腎生検時の臨床所見,病理組織所見,短期予後について比較検討した。さらに,組織像が類似する紫斑病性腎炎 (Henoch-Schonlein purpura nephritis; HSPN) も対象として併せて検討した。対象は1998年1月から2008年12月までの小児IgA腎症175例とHSPN61例で,腎生検標本を用いた蛍光抗体法にてメサンギウムにIgGが沈着する陽性群と陰性群に分け,両群間で初回腎生検時の臨床所見,病理所見,2年後の短期予後について統計学的解析を行った。IgG陽性群はIgA腎症の71例 (40.6%),HSPNの16例 (26.2%) に認められ,陰性群に比して年齢差はなく,尿潜血,血清アルブミン値も差は認められなかったが,IgG陽性群は陰性群に比して,尿蛋白が多く,24-hr Ccrが低く,腎生検までの日数が長期であった。さらにIgA腎症では尿中ポドサイト個数がIgG陽性群に有意に多くみられた。病理所見ではHSPNではIgG陽性-陰性群間に有意差はなかったが,IgA腎症ではIgG陽性群にメサンギウム増殖,管内増殖,半月体形成が高度であった。2年後の評価では,IgA腎症においてIgG陽性群に蛋白尿残存者が多かったが (16.6% vs. 7.9%),HSPNでは有意差はみられなかった。今回の検討から,メサンギウムへのIgA-IgG共沈着はIgA腎症の発症および進展のメカニズムのひとつのファクターである可能性が示唆された。

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© 2009 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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