2009 年 22 巻 2 号 p. 91-96
膿尿を尿路感染症診断の手がかりとされることが多い。しかし,筆者らは最近,膿尿を認めない症例を経験した。
そこで膿尿を認めない尿路感染症の臨床的特徴を明らかにする目的で検討を行った。
対象は最近5年間に入院した上部尿路感染症の129例 (男:女=88:41,年齢中央値4.12ヵ月)。膿尿の有無で2群に分け,年齢,性別,発熱から検尿までの時間,最高体温,最高白血球数,最高CRP,および膀胱尿管逆流現象の有無について比較検討した。
その結果,膿尿を認めない18例 (14%) と膿尿を認めた111例 (86%) の二群間で,上記項目について統計学的有意差は認められなかった (p>0.05)。ただし,起炎菌に関しては膿尿を認めた例でE. coliが,認めない例でEnterococcusが有意に多かった。
以上より,膿尿を診断の手がかりとすると,膿尿を呈さない1割強の尿路感染症および基礎疾患としての膀胱尿管逆流現象を見逃す可能性があるため,細菌尿の確認を必ず行うべきであると思われた。