抄録
Yersinia pseudotuberculosis (Y. pstb) 感染症は,従来より確定診断が困難とされてきた。今回われわれは,LAMP法 (Loop-Mediated Isothermal Amplification) を用いて便よりY. pstbを検出し,後の血清抗体価と合わせて診断に至った症例を経験した。
症例は10歳女児,発熱・腹痛を主訴に5病日に入院した。細菌性腸炎,腎前性腎不全があり,輸液・抗生剤による治療で改善した。16病日より川崎病様症状を呈したため,入院時の便検体で培養は陰性であったが,LAMP法を施行しY. pstb陽性を確認した。ペア血清でY. pstb 2a型が陽性で確定診断とした。Y. pstb感染症の診断は,便の低温培養や研究施設での抗体価測定など煩雑な側面があり,診断に至らない症例も多い。便検体によるLAMP法はY. pstb感染症の早期診断の有用な補助検査と考えられた。