日本小児腎臓病学会雑誌
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総説
Alport症候群と良性家族性血尿の遺伝子変異と臨床像: “IV型コラーゲン関連腎症” という概念の提唱
田中 幸代蓮井 正史野津 寛大飯島 一誠杉本 圭相竹村 司金子 一成
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2010 年 23 巻 2 号 p. 172-178

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抄録
 Alport症候群 (Alport sndrome: AS) と良性家族性血尿 (bnign fmilial hmaturia: BFH) は,比較的頻度の高い遺伝性腎疾患である。前者の腎機能予後が不良であるのに対し,後者は,予後良好で,その臨床像は対照的である。近年,ASの多くはX染色体に位置する遺伝子・COL4A5の変異で,また,BFHの半数近くは2番染色体に位置する遺伝子・COL4A3COL4A4のヘテロ変異で発症することが明らかとなり,遺伝子解析による発症早期の鑑別が可能となってきた。一方で,従来,ASの原因遺伝子と考えられてきたCOL4A5の変異がBFHの家系で確認されるなど,4型コラーゲンα鎖の遺伝子変異とその臨床像の関係には多様性が大きいことが明らかとなってきた。
 今回,筆者らもCOL4A5変異を有するにもかかわらず,BFHの臨床像を呈する家系を経験し,「ASやBFHといった臨床像からの分類ではなく,病因論に立脚し,“IV型コラーゲン関連腎症” といった概念を確立すべきではないか」と考えるに到った。
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© 2010 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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