日本小児腎臓病学会雑誌
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症例報告
OCRL 1およびCLCN 5に遺伝子変異を認めないDent病の兄妹例
木全 貴久蓮井 正史山下 美代子金子 一成野津 寛大飯島 一誠
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2011 年 24 巻 1 号 p. 92-95

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抄録

 13歳と10歳の兄妹で,学校検尿で発見された尿細管性蛋白尿の精査のために紹介受診した。兄妹ともに浮腫や高血圧はなく,成長・発達ともに正常で,難聴や白内障などの腎外症状も見られなかった。血液検査でも異常所見はなく,高カルシウム尿症も認めなかった。
 これらの所見からDent病と診断し,病因遺伝子とされているCLCN5OCRL1を解析したが,いずれにも変異を認めなかった。3年間,兄の尿中β2-ミクログロブリン (β2MG) は,1,000μg/L以下で著変なく,妹は当初1,000台であったものが最近は23,550μg/Lと上昇傾向である。
 Dent病の約60%はCLCN5遺伝子の変異によって,また10~15%はLowe症候群の責任遺伝子であるOCRL1遺伝子の変異によって発症する。これらの遺伝子はX染色体上に位置するため,患者の90%以上が男性で,女性保因者の尿β2MGは数千μg/L程度に上昇するが軽症である。しかし,本症例では兄よりも妹のβ2MGが異常高値であることから,常染色体遺伝のDent病の存在を示唆する貴重な症例と思われた。

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© 2011 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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