日本小児腎臓病学会雑誌
Online ISSN : 1881-3933
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ISSN-L : 0915-2245
24 巻, 1 号
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原著
  • 松村 千恵子, 倉山 英昭, 金本 勝義, 安齋 未知子, 西村 尚美, 北村 博司
    2011 年 24 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2011/04/15
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
     尿decoy cell・BKウイルス (BKV) PCR陽性を認めたステロイド抵抗性ネフローゼ症候群 (SRNS) 4例につき,尿中decoy cell,尿・血液のBKV PCRと症状・治療との関連につき検討した。全例微小変化型で,1例初発,3例頻回再発で,decoy cell検出時,全例1~2mg/kgのプレドニゾロン (PSL) とシクロスポリン (CyA) が投与されていた。症例1,2は幼児の膀胱炎 (1例は出血性膀胱炎) で,初感染の可能性があるが,尿・血液のBKV PCR陽性期間の遷延が認められた。症例3は無症候性BKV尿排泄,症例4はdecoy cell・尿BKV PCR定量高コピー数が持続し,血液BKV PCRが一過性に陽性を呈した。BKV再活性化のリスクファクターとして,CyAトラフレベル高値 (100~150μg/l),頻回再発によるPSLの反復増量が考えられた。尿BKV PCR定量高コピー数が持続する症例においては,BKV血症さらにはBKV腎症へ進展する可能性が否定できず,慎重な経過観察が必要と考えられた。
  • 井上 由香, 平野 大志, 遠藤 周, 西崎 直人, 藤永 周一郎, 大友 義之, 清水 俊明
    2011 年 24 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 2011/04/15
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
     目的: 初発有熱性UTIにおいて,急性期DMSAとUSを組み合わせることでVCUGの適応を絞れるかを検討した。
     対象と方法: 当センターにおいて,初発有熱性UTIと診断された27例 (男児20例,女児7例,中央値年齢3か月) を対象とした。入院後7日以内にDMSAおよびUSを施行し,その後VCUGを施行。
     結果: VURは11例 (40%) に認められた。8例は片側,3例は両側で,grade II度が3例で他はすべてIII度以上であった。急性期DMSAによる高度VURの検出率は88%であったが,急性期DMSAとUSを組み合わせると高度VURをすべて検出することが可能となり,感度・陰性的中率はともに100%であった。結果として27例中10例 (37%) の児がVCUGを回避できたと考えられた。
     結語: 急性期DMSAおよびUSいずれかに異常が認められた場合のみVCUGを施行すれば,不必要なVCUGを回避できると考えられた。
  • 齋藤 宏, 峯 佑介, 渡辺 拓史, 長野 伸彦, 吉田 彩子, 鈴木 潤一, 石毛 美夏, 浦上 達彦, 高橋 昌里
    2011 年 24 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2011/04/15
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
     Hyperreninemic hypoaldosteronismは,アルドステロン合成障害により低ナトリウム血症,高カリウム血症,循環血漿量低下を来す疾患である。症例は体重増加不良を契機に発見され,低ナトリウム血症,高カリウム血症,高レニン血症から偽性低アルドステロン症の疑いで受診した。高レニン血症に比較して血中アルドステロン値は月齢基準範囲内を推移し,フルドロコルチゾンへの反応からHyperreninemic hypoaldosteronismと診断した。本症例は他にも高カルシウム尿症,一過性の腎性低尿酸血症と活性型ビタミンD高値も認めた。これらの異常を一元的に説明することは困難であり,過去の文献報告も認めず,新たな症候群の可能性が示唆された。
  • 山川 聡, 上村 治, 永井 琢人, 日比 喜子, 山崎 靖人, 山本 雅紀, 中野 優, 笠原 克明, 谷風 三郎, 吉野 薫, 渡邉 仁 ...
    2011 年 24 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2011/04/15
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
     当施設での一次性膀胱尿管逆流症 (VUR) 症例のbreakthrough infectionについて後方視的に検討した。排尿時膀胱尿道造影でVURを証明された626例の内,神経因性膀胱や後部尿道弁などの下部尿路疾患を除いた一次性VUR425例 (男/女: 281/144,両側/片側: 229/196) を対象とした。経過中最大のVUR grade別 (両側の場合はgradeの高いほうで分類) に分けると,I/II/III/IV/V: 33/64/99/131/98例であった。breakthrough infectionを起こしたのは425例中90例 (21.2%) であり,感染回数別の症例数はそれぞれ1回/2回/3回/4回/5回: 50/25/8/6/1例であった。各grade別のbreakthrough infection発症症例数および率は,それぞれI/II/III/IV/V: 0/33例 (0%)/3/64例 (4.7%)/15/99例 (15.2%)/44/131例 (33.6%)/28/98例 (28.6%) であった。VURのgradeが大きいとbreakthrough infectionの回数が多かった (p<0.01)。なお,VUR grade IIとIIIの間に有意差はなく,VUR grade IIIとIVの間では,p値=0.015(<0.05) と有意差を認めた。このことより,grade I~IIIとIV~V (高度VUR群) の2群に分けて検討すると,breakthrough infection発症症例数および率は,それぞれ18/196例 (9.2%),72/229例 (31.4%) と有意水準p<0.001で高度VUR群が高率にbreakthrough infectionを起こした。さらに,この2群とbreakthrough infection回数 (1回以下と複数回) との間でχ2検定を行うとp<0.001と有意差があり,高度VUR群で有意に複数回のbreakthroughが起こりやすいことが分かった。
  • ——小児期発症ネフローゼ症候群患者を対象として——
    柴野 貴之, 吉岡 春菜, 川田 珠里, 小川 誠, 瀧 正史
    2011 年 24 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2011/04/15
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
     1980年から2010年の30年間に,当院および国立病院機構岡山医療センターで診療を行った小児期発症ネフローゼ症候群患者258症例におけるキャリーオーバー (carry over; CO) 50症例について臨床的特徴を検討した。小児期発症のネフローゼ症候群 (nephrotic syndrome; NS) において,COする率は約20%であった。CO例の特徴として,全症例の平均年齢に比してやや低年齢発症であり,再発様式は頻回再発型が主であった。また,低年齢発症であるほど慢性化する傾向であった。NSは思春期 (12~18歳) までにステロイド治療によって完全寛解する割合が高いが,それ以降CO化しても,腎機能低下をきたす症例は極めて稀であった。また,再燃時のステロイド剤に対する反応性も良好なままであった。COの問題点として社会適応の側面も重要な課題であった。
  • ~骨合併症の見地から~
    小椋 雅夫, 亀井 宏一, 堤 晶子, 野田 俊輔, 佐藤 舞, 藤丸 拓也, 石川 智朗, 宇田川 智宏, 伊藤 秀一
    2011 年 24 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2011/04/15
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
     グルココルチコイド (以下,ステロイド薬) の全身投与が長期にわたるステロイド依存性ネフローゼ症候群,頻回再発型ネフローゼ症候群,ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群などのいわゆる難治性ネフローゼ症候群ではステロイド薬の副作用が大きな問題となる。とりわけ骨合併症である成長障害 (低身長),骨粗鬆症,大腿骨頭壊死は重篤かつ不可逆的なものが多い。今回,私達はステロイド薬の副作用による骨合併症を呈した難治性ネフローゼ症候群4例に対してリツキシマブ療法を行った。リツキシマブの投与後,全例がステロイド薬からの離脱が可能となり,骨密度の改善や新たな骨合併症の予防が可能となった。リツキシマブは小児の難治性ネフローゼ症候群において再発抑制効果があり1)2),ステロイド薬の減量中止が可能となるが,infusion reactionをはじめとして,重症感染症,間質性肺炎,進行性多巣性白質脳症などの重篤な副作用を呈することもあり,使用にあたっては注意が必要とされる。
  • —有効性・安全性,薬物動態の評価—
    飯島 一誠, 佐古 まゆみ, 木村 利美, 服部 元史, 亀井 宏一, 野津 寛大, 宍戸 清一郎, 相川 厚, 森田 研, 後藤 芳充, ...
    2011 年 24 巻 1 号 p. 36-46
    発行日: 2011/04/15
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
     国内小児腎移植におけるミコフェノール酸モフェチル (MMF) の有効性・安全性,薬物動態を評価するために,多施設共同オープンラベル臨床試験を行った。
     小児腎移植患者25例に,多剤免疫抑制薬併用下にMMF (600∼1,200mg/m2/日 分2経口投与) を1年間投与し,経過観察した。評価項目は,腎移植後6か月の拒絶反応発現割合,腎移植後1年の生着割合および生存割合,有害事象発現頻度とした。AUC0-12,Cmax,Tmaxなどの薬物動態態パラメータを算出した。
     腎移植後6か月の拒絶反応発現割合は24%,腎移植後1年の生着割合は100%であった。有害事象発現頻度は68%であった。MMF投与後3か月時平均AUC0-12は,48.7±27.6μg hr/mLであった。推定AUC0-12の経時的推移は,米国小児腎移植患者と同様であった。
     本試験には試験デザインと登録症例数が少ないという制限があるものの,国内小児腎移植患者における,MMFの拒絶反応抑制効果と安全性が示唆された。また国内小児腎移植患者は,国内成人患者,米国小児患者と同様の薬物動態を示すことが認められた。
  • ——保存血浄化法の検討——
    佐々木 慎, 高田 彰, 石川 健, 千田 勝一
    2011 年 24 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2011/04/15
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
     新生児の体外循環による持続的腎代替療法には保存血のプライミングが必要であるが,低容量の浄化器にはポリアクリロニトリル膜が使用されており,酸性条件下でブラジキニン (BK) が生成される可能性がある。本研究では国産ポリアクリロニトリル膜を使用して,BKの動態と保存血浄化法について検討した。保存血をプライミングした閉鎖回路において,非浄化時のBK (n=3) と,持続的血液透析 (CHD: 透析液流量2,000ml/時),持続的血液濾過 (CHF: 濾過流量500ml/時),持続的血液透析濾過 (CHDF: 透析液流量1,500ml/時,濾過流量500ml/時) による浄化時のBK,pH,重炭酸イオン,電解質,クエン酸 (n=6) を測定した。非浄化時のBK濃度はプライミング前後で42.6±12.4pg/ml (mean±SD) から145.0±9.5pg/mlへ有意に上昇した (p<0.01)。BKはCHDFで30分後にすべて100pg/ml未満となり,0分値を100%としたときの残存率はCHDFが等浄化量のCHDよりも10分後に有意に低値であった。そのほかの測定結果はCHDとCHDFが浄化量の少ないCHFよりも優っていた。新生児の保存血前処理におけるBKの除去には,CHDFが有用と考えられた。
総説
  • 井庭 慶典, 杉本 圭相, 柳田 英彦, 岡田 満, 竹村 司
    2011 年 24 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 2011/04/15
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
     血栓発症の背景にはさまざまな基礎疾患が存在し,さらに動脈血栓と静脈血栓ではその基礎疾患や発症病態も異なる。臨床的には単一因子ではなく,多くのリスク因子が混在し血栓が発症すると考えられる。ネフローゼ症候群は血栓形成の基礎疾患として重要であり,合併症として静脈血栓症はよく知られており,その発症には血液粘稠度の亢進に加え,凝固阻止因子の低下が発症の原因と考えられている。今回,ネフローゼ症候群の再発時に2臓器にわたり動脈血栓をきたした症例を経験したので,その血栓発症における病態と治療法を含めた今後の問題点について述べる。
症例報告
  • 澤井 俊宏, 野田 恭代, 米田 真紀子, 丸尾 良浩, 野村 康之, 竹内 義博
    2011 年 24 巻 1 号 p. 60-63
    発行日: 2011/04/15
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
     腎リンパ管拡張症の男児例について,6年間の経過を報告する。1歳11か月時に特徴的な画像所見から腎リンパ管拡張症と診断した。感染症罹患を契機に胸水・腹水が貯留するエピソードを繰り返していたが,当科での初診時以降は同様の胸腹水貯留はみられていない。画像所見上の腎周囲膜様構造物,腎盂周囲嚢胞に変化なく,エリスロポエチン高値および多血症は持続していた。経過中に成長ホルモン分泌不全性低身長症および高レニン性高血圧症が明らかとなり,それぞれ成長ホルモン補充療法,降圧療法を実施中である。本疾患は小児期に発症する嚢胞性腎疾患としては非常に稀で報告例も少なく,興味深い症例と考えられたので報告する。
  • 中野 優, 藤田 直也, 松林 正, 榎 日出夫, 松林 里絵, 武田 紹, 中嶌 八隅, 大呂 陽一郎, 横田 卓也
    2011 年 24 巻 1 号 p. 64-67
    発行日: 2011/04/15
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
     貧血の経過観察中に腎機能低下から診断に至ったネフロン癆の1例を経験した。症例は8歳11か月男児。過去に腎疾患を指摘されたことはなく,学校検尿でも異常はなかった。6歳6か月時に近医での採血で貧血を指摘され総合病院小児科を紹介受診された。小児科受診の際の採血検査ではHb9.7g/dL Cr0.56mg/dLであった。鉄欠乏性貧血の診断で,以後外来にて鉄剤内服となった。しかし貧血の改善はなく,8歳11か月時の貧血精査のための採血で腎機能低下を発見され (BUN67mg/dL, Cr3.55mg/dL),当科を紹介となった。当科初診時にestimate glomerular filtration rate (以下,eGFR) 18.04ml/min/1.73m2,CKD stage4であった。腎生検を施行しネフロン癆と確定した。診断後に末期腎不全となったため腹膜透析を導入した。
     ネフロン癆は腎移植以外の根本的治療法の確立していない腎疾患であるが,早期に発見することで心血管系障害や成長障害などの合併症に対して,重大な後遺症を残さないように治療介入することはできると考える。早期に発見するためにネフロン癆の初発症状と腎外病変を理解し,常に鑑別診断として考慮することが大切である。
  • 服部 希世子, 仲里 仁史, 河野 智康, 佐藤 歩, 田村 博, 松本 志郎, 市原 順子, 辛嶋 真実, 田仲 健一, 岩井 正憲, 伊 ...
    2011 年 24 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 2011/04/15
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
     新生児ヘモクロマトーシスは新生児早期より肝臓を中心に鉄の沈着を生じ,重篤な肝障害を呈する稀な疾患で,肝障害が急速に進行し致死的になることが多い。
     今回われわれは,新生児ヘモクロマトーシスを合併し,両側低形成腎による慢性腎不全に至った症例を経験した。小腸閉鎖,胎便性腹膜炎を認め,日齢1に小腸閉鎖根治術を施行したが術後より乏尿となり次第に腎障害が進行した。その後,肝障害と高フェリチン血症が出現した。腹部CTでは両側低形成腎を認め,MRIでは肝臓・脾臓および腎皮質に鉄の沈着を認めヘモクロマトーシスと診断した。採血時の瀉血とビタミンE内服を行いヘモクロマトーシスは徐々に改善した。慢性腎不全に対して生後10か月時に腹膜透析を導入した。胎便性腹膜炎による腹膜透析療法への影響は大きく,早期に腎移植を行う予定である。
  • —治療開始時期とMTX除去率—
    澤田 真理子, 藤原 充弘, 島田 典明, 田中 紀子, 桑門 克治, 武田 修明, 浅野 健一郎, 福島 正樹, 新垣 義夫
    2011 年 24 巻 1 号 p. 74-80
    発行日: 2011/04/15
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
     メトトレキサート (methotrexate; MTX) 中毒に各種血液浄化療法が有効であると報告されている1)。MTX3g/m2の使用によりMTX中毒 (48時間値18.8μmol/l) および急性腎不全 (血清Cr値2.47mg/dl) を発症したBurkittリンパ腫の12歳男児に対し,血液透析 (hemodialysis; HD) 1回および血液吸着 (direct hemoperfusion; DHP) 2回を施行した。MTX血中濃度は速やかに低下し,合併症は見られなかった。MTXの除去率はHDで64.9%,DHPでそれぞれ72.2%,65.3%であった。血清Cr値が正常範囲に回復後,患児はMTX0.5g/m2の追加治療により完全寛解を得た。今回,血中濃度測定により,高容量MTX投与後のMTX中毒症を適切に診断し,早期にHDとDHPを行い,合併症なく回復することが出来た。血液浄化の導入時期およびモダリティ別MTX除去率を検討し,報告する。
  • 成瀬 裕紀, 奥井 秀由起, 岡田 広, 谷本 愛子, 江口 広宣, 平本 龍吾, 小森 功夫, 秋草 文四郎
    2011 年 24 巻 1 号 p. 81-85
    発行日: 2011/04/15
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
     発症12年後に初めてステロイド感受性から抵抗性に変化した微小変化型ネフローゼ症候群 (MCNS) の1例を経験した。
     症例は15歳男児である。1996年11月 (3歳時) にネフローゼ症候群を発症した。頻回再発型のためプレドニゾロン (PSL) とシクロスポリン (CyA) で治療された。2003年12月以降に施行した腎生検3回の病理診断は,すべて微小変化型 (MC) であった。2009年2月,再発時に初めてステロイド抵抗性ネフローゼ症候群と診断された。第4回腎生検の病理診断もMCでありCyA腎症の所見は認めなかった。同年4月より小児難治性腎疾患治療研究会のプロトコールを導入した。メチルプレドニゾロンパルス療法 (MPT) 後より蛋白尿が減少し,寛解に至った。ネフローゼ症候群の長期経過後に,稀に感受性から抵抗性に変化することがある。その際には腎生検を行う必要があり,MPTとCyAの併用療法が治療の選択肢の一つになりうる。
  • 田中 百合子, 阿部 美子, 大戸 佑二, 板橋 尚, 村上 信行, 作田 亮一, 永井 敏郎
    2011 年 24 巻 1 号 p. 86-91
    発行日: 2011/04/15
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
     West症候群の第一選択治療はACTH療法 (AT) であるが,腎石灰化,腎結石合併の報告もある。本症で併用されることが多いzonisamide (ZNS) は,炭酸脱水素酵素阻害剤様の作用を持ち,腎結石の有害事象がある。
     AT中,腎石灰化を認めた5例についてZNS投与の有無,AT期間,ACTH総量,AT中の尿中Ca/Cr比,%TRP,尿pH,血清Ca,P,ALP値の推移を後方視的に検討し,腎石灰化を起こさなかった4例と比較した。腎石灰化を認めた全例でZNSを併用していた。AT期間は腎石灰化群で長く量も多い傾向があった。AT中の尿中Ca/Cr比の上昇は,腎石灰化群でより高かった。血清P,%TRPは低下し,血清ALPも低下したが両群で差はなかった。ZNSの併用,長期多量のAT,尿中Ca/Cr比の上昇が腎石灰化の危険因子と思われた。AT中,特にZNS併用時は,腎エコー,尿中Ca/Cr比による経過観察が必要である。
  • 木全 貴久, 蓮井 正史, 山下 美代子, 金子 一成, 野津 寛大, 飯島 一誠
    2011 年 24 巻 1 号 p. 92-95
    発行日: 2011/04/15
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
     13歳と10歳の兄妹で,学校検尿で発見された尿細管性蛋白尿の精査のために紹介受診した。兄妹ともに浮腫や高血圧はなく,成長・発達ともに正常で,難聴や白内障などの腎外症状も見られなかった。血液検査でも異常所見はなく,高カルシウム尿症も認めなかった。
     これらの所見からDent病と診断し,病因遺伝子とされているCLCN5OCRL1を解析したが,いずれにも変異を認めなかった。3年間,兄の尿中β2-ミクログロブリン (β2MG) は,1,000μg/L以下で著変なく,妹は当初1,000台であったものが最近は23,550μg/Lと上昇傾向である。
     Dent病の約60%はCLCN5遺伝子の変異によって,また10~15%はLowe症候群の責任遺伝子であるOCRL1遺伝子の変異によって発症する。これらの遺伝子はX染色体上に位置するため,患者の90%以上が男性で,女性保因者の尿β2MGは数千μg/L程度に上昇するが軽症である。しかし,本症例では兄よりも妹のβ2MGが異常高値であることから,常染色体遺伝のDent病の存在を示唆する貴重な症例と思われた。
  • 田中 悦子, 今村 秀明, 此元 隆雄, 布井 博幸, 久野 敏, 尾田 高志
    2011 年 24 巻 1 号 p. 96-102
    発行日: 2011/04/15
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
     今回われわれは,発症に溶連菌感染の関与が示唆された若年発症のANCA陰性顕微鏡的多発血管炎 (MPA) の症例を経験した。症例は12歳男児。発熱,腹痛,皮疹および急性腎不全を呈し,血液浄化療法を要した。膵炎や関節炎などを合併し,多臓器にわたる症状から血管炎症候群が疑われた。皮膚生検は白血球破砕性血管炎,腎生検では半月体形成を伴わないpauci-immune型糸球体腎炎で細動脈にフィブリノイド壊死性血管炎を認めた。MPO-ANCA,PR3-ANCAはともに陰性でありANCA陰性のMPAと診断し,ステロイドによる治療で症状は速やかに軽快した。ASKが高値であり溶連菌感染の関与が疑われ,腎糸球体では溶連菌の腎炎惹起抗原であるNAPlrの染色が陽性であった。これは,溶連菌感染が発症の契機となったことを示すものであり,ANCA陰性MPAの発症機序を検討する上で示唆に富む症例であった。
  • 熊谷 直憲, 小沼 正栄, 入江 正寛, 渡辺 庸平, 菅原 典子, 鎌田 文顕, 森本 哲司, 西村 秀一, 根東 義明, 土屋 滋
    2011 年 24 巻 1 号 p. 103-108
    発行日: 2011/04/15
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
     臍帯血移植後にアデノウイルス出血性膀胱炎から尿管炎と水腎症を来したフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病症例を経験した。7歳男児,フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に対して臍帯血移植が行われた。生着が認められたが,移植後40日目より発熱,排尿痛,肉眼的血尿が認められた。画像検査で両側腎の腎盂拡張と右尿管の拡張および粘膜肥厚,膀胱粘膜の肥厚が認められた。尿よりアデノウイルスが分離培養されたため,アデノウイルス出血性膀胱炎から尿管炎と水腎症を来したと考えられた。リンパ球の増加とともに保存的療法にて臨床症状の改善が認められたが右腎の水腎症は残存し,レノシンチグラムでは右腎の排泄障害が認められた。腎機能に関しては長期的な経過観察が必要と考えられた。
海外論文紹介記事
  • 吉矢 邦彦
    2011 年 24 巻 1 号 p. 109-111
    発行日: 2011/04/15
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
     背景: 妊娠がIgA腎症の長期の経過に影響するかどうかは不明である。正常な腎機能を呈するIgA腎症症例において, 妊娠の有無が腎機能に影響するかを検討することが目的である。
     研究デザイン: イタリアでの多施設共同のコホート研究。
     対象: IgA腎症と診断を受けた妊娠可能な年齢の女性であり, 診断時の血清クレアチニン値が1.2mg/dl以下で, 生検後に最低5年のフォローアップができる症例。
     方法: 妊娠の有無により2群に分け, 基礎データは生検時の1日尿蛋白量, 高血圧の有無そして病理組織学的所見とした。
     予後: 妊娠後のクレアチニン・クリアランスの変化率, 1日尿蛋白量の変化, および新規の高血圧の発症を調査した。
     結果: 223例の女性が妊娠群136例と非妊娠群87例に分けられた。生検査時の基礎データ (クレアチニン・クリアランス, 高血圧の頻度, 年齢, および病理組織学的所見) は2群間で差はなかった。1日尿蛋白量は, 妊娠群が1.33g/日であり, 非妊娠群の0.95g/日に比べ多かった (p=0.03)。妊娠後の腎機能の経過は, 観察期間10年間で2群間の差は認めなかった。妊娠により蛋白尿の変化や新規発症の高血圧は影響しなかった。
     結論: 妊娠は正常な腎機能を持つIgA腎症の女性の長期の経過に影響しない。
  • 川崎 幸彦
    2011 年 24 巻 1 号 p. 112-113
    発行日: 2011/04/15
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
     ヘノッホ・シェーライン紫斑病 (Henoch-Schonlein purpura, HSP) は, 皮膚, 関節, 消化管や腎に合併症を有する全身性血管炎で, 大部分が小児期に発症する。腎外症状は合併症なく速やかに改善することが多く, 腎障害の程度がHSPの長期予後に関連すると報告されている。腎合併症は, 血尿や蛋白尿が軽度なものからネフローゼ症候群 (NS) を呈する症例までさまざまで, HSP患者の約1/3に認められる。腎障害は大部分が軽症で経過観察にて改善を認めるが, 1%弱の患児が腎死をきたすと考えられている。
     今回, 著者らは, 紫斑病性腎炎患児への進展リスク因子や診断のために必要な経過観察期間を明確にするため, HSP患児における腎障害時の臨床経過を6か月間前方視的に検討した。
  • 中村 信也
    2011 年 24 巻 1 号 p. 114-116
    発行日: 2011/04/15
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
     我々はアンギオテンシンレセプターブロッカー (ARB) の腎保護効果はポドサイト上のAT1レセプターに依存しているという仮説のもと研究を行っている。そのためにAT1gene (Agtra) ノックアウトとNEP25〔immunotoxin『抗Tac (Fv) PE38』でポドシン障害を選択的に引き起こすモデル〕を交配し, ポドサイト特異的ノックアウトマウスを作成した。注射後4週間でAgtr1aノックアウト/NEP25マウス群ではNEP25群に比して尿中アルブミン/クレアチニンが減少しなかった (8.08in KO vs 4.84 in Control)。両群ともに同様の硬化 (0.66 vs 0.82, 0~4硬化スコアで比較) とネフリンの減少 (5.78±0.45 vs 5.65±0.58,0~8scaleで比較) を認めた。
     NEP25マウスではAt1アンタゴニストあるいはACEIで明らかに蛋白尿は減少し, 硬化が軽くなった。ヒドララジンではその現象は見られなかった。
     さらにアンギオテンシンIIを持続注射するとAgtr1aノックアウト, ワイルドタイプ両者とも微小アルブミン尿が出現した。
     したがって, アンギテンシンの阻害はポドサイトのAT1に依存しないでポドサイトを保護し, 糸球体硬化防止につながる。
     メカニズムとして, 他の細胞のAT1ブロックかAT1を介さないメカニズムの存在が考えられる。われわれの研究はポドサイト障害による硬化は他の細胞を抑えることが有効であることを示唆している。
各地方会の二次抄録
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