日本小児腎臓病学会雑誌
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症例報告
発症に溶連菌感染の関与が示唆されたANCA陰性顕微鏡的多発血管炎の1例
田中 悦子今村 秀明此元 隆雄布井 博幸久野 敏尾田 高志
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2011 年 24 巻 1 号 p. 96-102

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抄録

 今回われわれは,発症に溶連菌感染の関与が示唆された若年発症のANCA陰性顕微鏡的多発血管炎 (MPA) の症例を経験した。症例は12歳男児。発熱,腹痛,皮疹および急性腎不全を呈し,血液浄化療法を要した。膵炎や関節炎などを合併し,多臓器にわたる症状から血管炎症候群が疑われた。皮膚生検は白血球破砕性血管炎,腎生検では半月体形成を伴わないpauci-immune型糸球体腎炎で細動脈にフィブリノイド壊死性血管炎を認めた。MPO-ANCA,PR3-ANCAはともに陰性でありANCA陰性のMPAと診断し,ステロイドによる治療で症状は速やかに軽快した。ASKが高値であり溶連菌感染の関与が疑われ,腎糸球体では溶連菌の腎炎惹起抗原であるNAPlrの染色が陽性であった。これは,溶連菌感染が発症の契機となったことを示すものであり,ANCA陰性MPAの発症機序を検討する上で示唆に富む症例であった。

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© 2011 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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